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外科的手術を行うにあたっての検査方法と治療法|脳梗塞
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脳梗塞の治療は、主に「薬物療法」を用いられます。脳梗塞は脳の血管が血栓によって詰まり脳の細胞を壊死させる病気です。
そのため、薬物療法を用いられるのは回復させることを目的とせず現状をこれ以上悪化させないために行います。しかし、脳梗塞の梗塞状態や梗塞箇所・容態よって外科的手術を用いり、再発予防のために外科的手術を行うことがあります。
ここでは外科的手術にあたるまでの流れ、外科的手術の種類・方法について説明してきたいと思います。
診断に必要な検査
脳梗塞は早期発見・早期受診・早期治療が予後の後遺症や障害の軽症へつながるとされています。
しかし、状況によっては脳梗塞ではない場合も考えられます。そういったことを少しでも減らすためにも、問診・検査など行い診断を確定します。通常、脳梗塞の治療として薬物治療を用いられるのですが、脳梗塞の状態によっては「外科的手術」を行う事もあります。
その判断基準に繋げるためにも「症状」や「既往歴」をしっかり把握しておくことが大切でしょう。
問診
まず、身体に起きた症状が脳梗塞によるものか、またはそれ以外の疾患なのか鑑別します。
その際に効かれる内容として、
・発作の状況(いつ・どうのような状況で起きたか)
・既往歴や治療歴
・遺伝的要因(血縁者に脳卒中を発症した人がいるか)
・生活習慣病などの罹患の有無
・嗜好習慣(飲酒・喫煙など)
問診には基本的に患者本人に答えてもらいますが、発作の状況で意識がない・会話が困難な状態であると付き添いの方や倒れた際にそばにいた人が適任とされています。
神経学的検査
神経学的検査は通常、全身の健康状態を調べる診察で行われます。脳梗塞を発作で起こした場合、医師は患者の神経症状でどれくらい段階なのか診断する基準として使われます。神経症状のチェック項目として、
・運動障害(手がスムーズに動くか、立つ・座る・歩くができるか)
・言語障害(会話内容を理解し会話が成立するか、下が回っているか)
・感覚障害(感覚異常の有無・部位など)
こうした検査により、患者の症状が脳のどの部位にトラブルが起きているかなどを推定します。
画像検査
脳のどの血管が梗塞を起こしているのかを明確にするために画像検査を用いられます。
主にCTやMRIといった画像診断装置を使用して検査を行います。
・CT≪コンピューター断層撮影法≫
CT検査では、X線により撮影した画像データをコンピューターで処理し脳の輪切りにした断面図を表示します。脳梗塞の場合、梗塞した箇所を黒っぽく映し出しますが、発症してから24時間経過しないと画像上に病変が現れないことがあります。そのため、CT検査で出血が確認されてなかった場合はMRIを用いり梗塞を断定します。
・MRI≪磁気共鳴画像≫
MRI検査では、強力な電磁波を使って脳の断面図を画像化する検査です。MRI検査はCT検査と異なり縦・横・斜めといったあらゆる角度から撮影が可能とされています。そのため、見えづらかった病巣や深部の病変までも発見できるとされています。また、MRI検査はX線照射しないので、被爆の心配がなく安全性が高い検査方法といえます。しかし、強力な磁気の影響で心臓のペースメーカーなどの金属類が埋め込まれていると検査が受けられない場合があるため注意が必要です。
脳梗塞の分類検査
脳梗塞の診断をするにあたり基本的な検査方法を説明しました。
その診断に基づき脳梗塞の状態を調べ、どういった原因で発生したかを確定することで治療方針が確定できます。
・血管超音波検査(血管エコー検査)
血管超音波検査を行う事で梗塞や狭窄している箇所を特定することができる検査といわれています。主に頸動脈のエコー検査として使用され頸動脈の狭窄や血流を調べることができます。
・経頭蓋ドップラー検査(TCD)
経頭蓋ドップラー検査は血管超音波検査と類似しており、比較的低い超音波を出すことで頭蓋骨を通過しやすいとされています。そのため、頭蓋内の血管の様子や血流の速度などを検査することで、心臓からの塞栓なのか脳血管の狭窄・閉塞なのかを調べる事ができます。
・脳血管造影検査
脳血管造影検査とは、太もものつけ根などの太い動脈から脳の先端まで細いカテーテルを挿入し造影剤を注入することで脳血管系を抜き出すことができるとされています。この検査によって血管内腔がはっきりわかるため、脳梗塞の梗塞場所を特定するのに有効な検査方法とされています。一方、血管を傷つけ出血するリスクもあるとされています。
・CTアンギオグラフィー
CTアンギオグラフィーは、CT装置を使用し頭部の立体画像を映し出す検査方法です。そのため、脳の血管内腔の状態や頭蓋骨を立体的にあらゆる方向から確認できます。
・MRアンギオグラフィー
MRアンギオグラフィーはMRI装置を使用して脳血管だけを抜き出すことができる検査方法です。この方法で脳血管の梗塞箇所や血管が細くなった箇所を発見することができます。脳血管造影検査と違って造影剤を使わないため安全と考えられており、脳血管造影の代わりに使用されている事が多いとされています。
・心臓超音波検査(心エコー)
心臓超音波検査は超音波を使って心臓の状態を画像に映し出す検査方法です。そのため、心臓内壁の動きや心臓内の血流・血栓の有無・弁の働き・狭窄の有無など画像で診断できます。この検査は「心原性脳塞栓症」にとても有利な検査方法といわれています。
・脳局所血流量検査(SPECT/PET)
脳局所血流量検査には、SPECT(単光子放出コンピューター断層撮影)とPET(陽電子放出コンピューター断層撮影)の2種類あります。SPECT(単光子放出コンピューター断層撮影)は体内に放射線同位元素を注入し、それが脳の血流量で分布し状況を断層画面で見る検査です。また、PET(陽電子放出コンピューター断層撮影)は陽電子放出アイソトープを体内に注入すると脳内の酸素摂取率や消費量、ブドウ糖の利用率を画像化して測定する検査方法とされています。両者ともに脳梗塞の梗塞場所を精密に表し、より治療方法を明確にする検査といわれています。
外科的手術の種類
脳梗塞の治療では主に薬物治療が用いられますが、場合によっては手術が行われることもあります。その目的として、脳梗塞の範囲が広く緊急を要する対応や後遺症予防です。
ここでは、脳梗塞の治療法の1つである手術について説明していきたと思います。
頸動脈内膜剥離術
頸動脈内膜剥離術はアテローム血栓性脳梗塞でよく用いられる手術です。アテローム硬化によって起きた狭窄や梗塞を改善するために用いられる術式で、術中は全身麻酔で行われます。
狭窄・梗塞を起こした頸動脈の両極を留め、血流を一時的に遮断します。狭窄などの箇所を切開し、粥状に固まったアテロームや血栓などをはぎ取るように除去します。術後は血流の回復が見込めるとされているため、回復期には後遺症が比較的に軽いとされています。
しかし、頸動脈内膜剥離術をしないケースもあります。それは、患者の年齢が
・80歳を超えている場合
・一度同じ手術をしたことがある
・心臓に合併症を持っている
・頭頚部に放射線治療をしている
・頸動脈の両極が高度の狭窄である
といった患者には、手術を見送ることがあります。
頸動脈ステント留置術
頸動脈ステント留置術はアテローム血栓脳梗塞または、ラクナ梗塞で用いられる手術です。
この手術は細くなった血管をステントという金属を血管内に留置させることで狭くなった血管を広げる治療方法です。そのため、ラクナ梗塞などの血管を細くする病気には、この手術を用いられることが多いとされています。
手術の流れとして、太もものつけ根にある大腿動脈から頸動脈まで長いバルーンカテーテル(風船付き管)を通し、狭窄・梗塞部分をバルーンで膨らませて狭窄部を広げます。そのままバルーン部分についている金属製のステントを狭窄部分に残しバルーンを萎ませ、カテーテルを抜きます。この手術は頸動脈内膜剥離術より手術時間が少ないことから、身体への負担も軽いとされています。
バイパス手術
バイパス手術は、脳梗塞によって血流が滞っている血管に頭皮などの血管をつなぎあわせて、迂回経路を新たに作る方法です。主に、内頚動脈や中大脳動脈などの太い動脈の狭窄や閉塞などによって起こります。
何度も繰り返され狭窄を起こしている人や、すでに閉塞状態にある場合などは、規模の大きな脳梗塞へ移行する可能性が高いとしてバイパス手術を行うことがあります。手術方法は全身麻酔で行われ、頭皮の血管を皮膚からはがした後に開頭し、詰りのある動脈と縫合してバイパスを作ります。
この手術はほかの手術に比べ、手術時間が長く身体に負担がかかるということから誰にでもできる手術ではないとされています。
外科的手術を行うにあたっての入院期間
脳梗塞を発症してからの入院期間は、症状や程度や後遺症の有無、障害の重度によって大きく変わってきます。一般的な入院で平均20日程度とされていますが、脳梗塞の状態が軽度の場合は、1週間ほど安静を保ち点滴治療、リハビリを行うことで日常生活に支障をきたさないほどに機能が回復するとされています。
しかし、症状が重度の場合、治療が終わったとしても寝たきり状態や重度の運動障害が残っているケースではリハビリ専門の病棟へ移動し引き続きリハビリを行う事が多いとされています。回復リハビリ専門病院は、重度の脳血管疾患の場合は最長で150日から180日程度入院できるとされています。
外科的手術を行うにあたっての費用
脳梗塞を発症してからの入院期間は約1ヶ月程度とされた場合、1ヶ月の入院費が約95万円だとされています。そこから、自己負担額3割または1割負担、高額療養費の減額などを使用すると約1ヶ月の入院費用が5万円から11万円とされています。
これは、年齢や所得によって受けられる制度が変わってくるので、各健康保険組合に確認が必要です。
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