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どんな福祉用具がいいの?|筋ジストロフィー
- 福祉用具
- 筋ジストロフィー
筋ジストロフィーの根本的治療法は未だなく、障害状況に合わせた適切なケアが必要とされています。
そのケアには、リハビリテーションが大きく関わっており同時にリハビリを行うにあたっての福祉用具の選定も重要となってきます。
今回は筋ジストロフィーにおける装具療法や福祉用具について説明していきたいと思います。
筋ジストロフィーにおける症状進行について
筋ジストロフィーの主症状は、運動機能の低下があげられますが「拘縮」「変形」「呼吸機能障害」「心筋障害」「嚥下機能障害」「消化管症状」「骨代謝異常」「内分泌代謝異常」「眼症状難」「中枢神経障害」などといった様々な機能障害や合併症を伴います。
筋ジストロフィー患児の多くは生まれてから歩行するまでに時間がかかり、通常生後8か月以降に伝い歩きをするところ、筋ジストロフィー患児はだいたい17か月から19か月とやや遅いとされています。この時期から下腿三頭筋*の仮性肥大*がみられます。また3歳から4歳ごろには動揺性歩行*があらわれます。8歳ごろには階段昇降が困難になり、9歳から11歳には一人で歩くのが困難になります。
その後、数年間は装具装着の歩行が可能となりますが、13歳ごろには歩行が困難な状態になり、徐々に年齢が増すにつれて15歳ごろには自力座位が困難、15歳以降は徐々に呼吸不全を合併するとされています。
こういった症状経過をたどるなか、歩行は13歳ごろまで可能なため歩行をするための装具はとても重要です。また自立支援を行っていく中で他の装具の用いることの必要になってきます。
*下腿三頭筋
おおよそふくらはぎの部位を指す。【腓腹筋とヒラメ筋で構成されている。】
*仮性肥大
筋萎縮をしている際に、筋肉が肥大していること。
*動揺性歩行
身体を左右に振りながら歩行すること。
歩行用装具
立位・歩行には、『移動能力の賦与』『廃用性筋委縮の予防』『下肢関節拘縮・脊椎変形の憎悪予防』『心理的賦与』『心肺系への適度の負荷』『骨粗鬆症の予防』などといった身体能力を維持する作用の他に他疾病の予防にも関わってきます。
そのため、できる限り歩行能力の維持を目指し、歩行用装具を使用したリハビリが行われます。
歩行を行うにあたっての歩行用装具について種類や説明をしていきたいと思います。
膝固定式長下肢装具
膝固定式長下肢装具を使用すると、股・膝関節伸展位での歩行がほとんどとなり歩行中の重心移動が重要となってきます。
下肢の拘縮・変形が強くあらわれる場合、膝固定式長下肢装具の適応が難しいといわれています。
また、装具による歩行延長期間だいたい3年から5年といわれており、治療成績は装具の種類・装具歩行開始時期・下肢手術の有無・装具歩行の実地時間と回数・生活環境などによっても異なります。
膝伸展補助付長下肢装具
膝伸展補助付長下肢装具は膝固定式長下肢装具と違って、膝の伸展が可能になった装具で膝屈曲制動と踵補高によるアライメントの調整、膝前面のばねによる膝伸展力の補助を特徴としています。
また膝伸展補助付長下肢装具には、残存している膝屈筋・足底屈筋・体幹筋を活用し歩行を可能としています。そのため、装具装着後リハビリを行うことでつかまり立ちや起立動作ができない人でも、短時間の一人で歩行が可能となります。
夜間装具
筋ジストロフィーの症状でしばしば見受けられるのが『尖足』ですが、その予防として夜間装具があります。
しかし、この装具の効果には賛否があり膝を伸展位に固定する長下肢装具は装着時の感覚が悪く、短下肢装具ではアキレス腱の伸展に伴う不快感を緩和するために膝を曲げてしまい屈曲拘縮を助長してしまう可能性があるとされています。
起立用装具
症状が進行し歩行が困難になり始めると廃用性変化を最小限にするために、できるだけ早い段階で長期間の立位ができるようにリハビリを転換していきます。
転換を行う際には今まで使用していた歩行装具が使用できず起立用装具が必要となってきます。
その起立用装具について説明していきたいと思います。
東埼玉式起立用装具
東埼玉式起立用装具は、下肢の変形が強くあらわれていても良好なアライメントで起立が可能となり、さらには拘縮・変形の進行に対応できるようになっています。
また、装具歩行が困難なったとしてもアライメントの調節が容易になったため、側弯症状があらわれる前に処方し、1日15分程度の起立訓練ができるようになりました。
体幹装具付長下肢装具
体幹装具付長下肢装具は、長下肢装具に体幹装具を追加して立位を取らせる装具のことを指します。股継手は屈曲制動とし股関節にばねを入れ起立がしやすい装具にしてあります。
装具療法中のケアについて
歩行用装具ならびに起立用装具を日常的に使用していると、破損やゆるみがでてきます。そういったところから2次災害としてけがなどを起こさないようにするために『点検』『アライメント』『立位・歩行の状態』『成長の拘縮』『変形の進行による不適合チェック』などが必要です。
このような点検・チェックを行う中で調整や修理・再制作を行い、できるだけ快適な立位・歩行を保てるようにしなくてはいけません。
他にも、歩行中の転倒の危険性もあるためヘッドギアの装着や環境整備を行う事も重要です。
まとめ
筋ジストロフィーの病因についての研究は年々に進歩をし、新たな発見がされています。
しかし、研究の進歩の中でも根本的な治療は未だなく、障害の状況に合わせた適切なケアが患者さんの生活の質を高めるとされています。
また、近年ノーマライゼーションの観点から在宅ケアを取り入れつつ病気においての重要な役割を見つけ出すことが患者自身にもその家族にも生活の質を落とすことなく、生活が送れるのではないかとされています。
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